院長水間の「診療報酬請求事務能力認定試験」合格記

開業を決めた私は、「医療事務」の勉強に取り組みました。
取り組むきっかけ、勉強を通して感じたこと、考えたこと、を徒然なるままに書いてみました。

2019/02/02 (金)

開業を決め、開業候補地を絞り込み始めていた私は、会計事務所のN先生に会いレクチャーを受け、最後にこう質問しました。
「開業を考えている医者が一番勉強すべき事項は何ですか?簿記ですか?」
すると、N先生はこうおっしゃいました「診療報酬を勉強しなさい」と。そして付け加えられました「僕もその昔受講したよ」

2019/02/03(土)

とりあえず「医療事務」をネットで調べました。そして驚きました。複数の資格が有ること、それぞれ違う団体が発行していることに。
まとめあげると以下のようになりました。

試験名 試験回数(/年) 合格率
診療報酬請求事務能力認定試験 2回 30%
医療事務管理士技能認定試験(医療事務管理士) 6回 57%
医療事務実務能力認定試験(医療事務実務士) 4回 2級 61.7%
    1級 54.2%
医療事務技能審査試験(メディカルクラーク) 12回 67%
医療事務検定試験 12回 88%

参考:医療事務として働くために役立つ資格・試験13選まとめ

月初だったため勤務先病院の医療事務さんが(休診日の)土曜日に出勤して仕事をしています。そこで、(今考えれば愚かな質問ですが)こう尋ねました。
水間「何してるんですか?何故そんなに時間をかけているんですか?」
医療事務「先生方のカルテ記載を遡って調べたりしながら、検査や処方に関する記載を調べているんです。今月のカルテだけでは見つけきれないので、先月とか、先々月とか」
私はびっくりし、恥ずかしい思いになりました。
「医者のカルテが適当だから私たちが苦労しているんです」と言っていることに気づいたからです。
本当にすみません。
「皆さんの残業は、私たち医者の(病名を含めた)カルテ記載が規定しているんですね」
そう確認できた私は、(医療事務の方々に迷惑をかけないためにも)改めて診療報酬の勉強に取り掛かろうと思いました。

どの試験を受けようか?悩みましたが、
「この医者は診療報酬のことを少しは勉強してるんだ」
医療事務の方々に少しは思ってもらいたい、伝わって欲しい、と合格率の低い試験に決めました。試験日が2019年07月だったことから、時間が有りそうだ、間に合いそうだ、とも思えました。

さて、ここからは試験に合格するための勉強です。
今度は、「診療報酬請求事務能力認定試験 独学」をキーワードに検索し、とりあえず必要そうな参考書を購入することにしました。

2019/02/04(日)以降

「診療点数早見表 2018年4月版」
「診療報酬請求事務能力認定試験 受験対策と予想問題集 2018年【後期版】」
を購入。

購入画面

予想問題集には5回分の過去問がついていたので、試験前5週で5回分を解こう、と計画。
2019/05月末までにオリジナル予想問題を解き、その解説を理解することを目標にしました。
(こういう作戦はたぶん大事です)

勉強を開始。まずは「予想問題集」の実戦知識のキーポイントを読む。
実戦知識のキーポイント

  1. 点数表の読解術
    → これは自分一人だけで読んでも十分な理解に届きませんでした。
  2. カルテ読解・レセプト作成術
    → レセプト作成術のみ読む。
  3. 医療保険制度等の概要
    → なんとなく知っていたが、理解が深まった。

そして、オリジナル学科問題を解く。解いては採点し解説を読む→繰り返すこと合計5回。

2019/02/16(土)以降

次にオリジナル実技問題に取り掛かる。

まずは(外来)から。いきなり解かずに解説を理解しながら回答を確認する。この時には電卓を用意しました。勉強しながら非常に苦労したのが、診療点数早見表の読み方でした。何度読んでもわからない箇所は飛ばし、理解可能な設問に集中しました。

電卓の写真

2019/05月上旬まで

問題を解きつつ早見表で該当ページを探す、の繰り返しは大変でしたので見出しの付箋を貼りました。

付箋を付けた問題集の写真

そして、指サックも購入しました。指サックは2019/05/05に開封したようです。

指サックの写真

2019/05月末まで

2019/03月ころから、自力一人では理解不能だった項目について知り合いの医療事務のM女史に質問していました。問題集を見せながら
水間「どうしてこういう点数の算入になるんですか?」と。
M女史は「点数表に書いてないことは無いから」と、点数表を操りながら説明し、点数表をどのように読み、理解し、解釈すべきか、をレクチャーくださいました。自力で理解不能な項目はたくさん有ったので、何度もレクチャーをお願いしました。
ようやくなんとか点数表の読み方のコツがつかめました。ですがここまでで勉強開始から3か月以上経過、既に2019/05月末、当初の目標ギリギリ。
そして...「早見表の読み方も知らなかったんだぁ~」と認識し、激しく反省したことが以下。

  • カルテの「傷病名」ってこんなに大切だったんだ。病名をカルテの「評価」や「計画(治療)」に書いてあるだけじゃダメなんだ。
  • うわぁ~、なんて残念な医者だったんだぁ~。

このころまでは、実技試験の点数計算で、いちいち手書きで「横軸に日付、縦軸にCBC, BC, A1c, CRP ...」なんて書いて表を作成し、点数を計算していました。が、とても試験時間が足りない。検査だけでなく、さらに注射や処置、手術...項目によっては加算も有り、手書きでは到底間に合わない。
みんな(合格者)はどうしているんだ?とネットを探すが自分に合いそうな適当な体験談が見つからなかったので、探すのを諦めました。
結局点数計算表をexcelで自作することにしました。

2019/06月から

使ってみると...
あぁ楽、なんて楽、今まで手書きで計算表を作っていた先週までの俺を殴りたい、そんな気分です。
次第に予想問題集付録の「レセプト作成マニュアル集」も活用し始めました。

レセプト作成マニュアル集の写真

問題を解くにあたり、私は色鉛筆を用意しました。レセプト項目の(10)番台は「赤」、(20)番台は「ピンク」...と色を決め、カルテに項目ごとに色をマーク。その後、自作の表にカルテを確認しながら点数記載。最後に合計、という手順を取りました。
とうとうブラインドタッチで電卓を使えるようになりました。
過去問に取り掛かり、複数回解きました。「あっ、しまった」を繰り返しながら、「そうだった、そうだった」と呟きながら...
また、このexcelの表は、問題を解いては更新し、更新バージョンを用いながら再度問題を解いてはさらに更新し、を繰り返し、試験前日の2019/07/14(日)まで更新し続けました。
我ながら、受験者には役立つものができたつもりです(私の合格はこのexcelの表"無し"ではありえませんでした)。

試験直前の1か月は、それなりに時間を費やして勉強しました。

2019/07/15(月・祝)

試験当日です。3時間の試験が13:00から始まります。
周りの受験者は若者ばかりです。ですが、皆さん試験準備に一所懸命。
制限無くなんでも持ち込み「可」なので、問題を解きやすいように早見表やその他資料を配置しているように見えました。

開始後まずは、実技(外来)に取り掛かりました。約30分で終了。あと2時間半。
次に実技(入院)に着手。手ごわい。大変。見直しも含めて二時間強も費やしてしまいました。
最後に学科。のこり30分未満。もはや1問1分しか時間が無い。
最低7割取れれば、と思いながら解きました。
16:00 あっという間に終了。

くたびれて帰宅。09/20(金)の合格発表を待つことにしました。

2019/09/20(金)

09:00前にPCでアクセス。
公益財団法人 日本医療保険事務協会
せっせと、第50回試験合格発表のページを更新。
09:00ちょうどに合格者発表。
合格していました。
医療事務の方々とようやく話が通じるようになる、そう安堵したものでした。
帰宅すると認定証が届いていました。

認定証の写真

総括

今回の勉強で私が圧倒的に有利だったのは、

  • 注射、処置、手術、検査...で知らない単語が無いこと、
  • カルテで意味の分からない記載が無いこと、
  • 自力で理解できなかった問題について、講義してくださる医療事務のM先生(私にとってはまさに先生でした)がいたこと、

です。

医療事務の方々の勉強量がいかに膨大であるかを知り敬意を表したい、と思ったと同時に、
医師でも看護師でも技師でも無い方々がカルテを読み診療報酬請求を行うことがいかに大変であるか?を身をもって知った気がします。

そして、レセプト作成時に検査や処方の根拠をカルテから探すのに苦労するくらいなら、医者(私)に確認してください(時間がもったいないから)、自分のクリニックでは自分に聞いてもらおう、と思いましたし、思い続けています。

最後に...
今回の勉強での最大の収穫は、(合格したことよりも)レセプトを起こすのに手間の少ない(苦労させない)カルテ記載を学べたことだったと思います。

おしまい。